アトピー性皮膚炎
(+デュピクセント+JAK阻害剤)
発症機序
アトピー性皮膚炎が発症する要因については以前からいろいろと言われていますが、最近では3つの因子に集約できるとされています。
#1 非アレルギー的な要因
皮膚バリア機能の異常、乾燥肌、尋常性魚鱗癬(ぎょりんせん)の原因で知られているフィラグリン遺伝子の変異がアトピー性皮膚炎、又はアトピー性皮膚炎と喘息の合併症に関与している事が明らかになりました。
日本においては20~30%のアトピー性皮膚炎患者にフィラグリンの変異があるとされています。しかしながらフィラグリンの変異の有無にかかわらず、アトピー性皮膚炎患者ではフィラグリン蛋白の発現が減少しています。
アトピー性皮膚炎患者は加齢とともに食物アレルギー、喘息、花粉アレルギー疾患にもかかる傾向が知られ、これは一般にアレルギーマーチと言われています。
ピーナッツアレルギーや加水分解小麦を含有する石鹸使用者にみられるアレルギーから経皮感作により誘導されたIgEがアレルギーの原因になり得ることを示し、患者への早期介入が食物アレルギーの発症リスクを下げ、それにより小児の食物アレルギー制限が再考され、同時に小児のスキンケアが再認識されています。
#2 アレルギーの発症の要因
皮膚バリアに異常があればいろいろな抗原が皮膚内に侵入するのが容易になり、外来抗原に対する免疫応答が生じ、アレルギー反応につながります。つまり抗原は蛋白抗原であり淡泊抗原に接触することにより、樹状細胞が抗原を取り込んでヘルパーT細胞を活性化、Th2型アレルギーを誘発します。
Th2型アレルギー反応は、Ⅰ型アレルギーであるIgE抗体が中心になって引き起こされるアレルギーを誘導します。
#3 かゆみ
かゆみを伝達するC繊維を制御する神経成長因子NGFの異常発現がC繊維を表皮へ伸長させ、かゆみを過激にさせています。シクロスポリンの内服がアトピー性皮膚炎患者の痒みに著効する事からシクロスポリンの標的であるT細胞からのかゆみのメディエーターにも注目が集まっています。
また、サイトカインのひとつが痒みを誘導することが報告されました。そのことにより近年IL-4、IL-13に作用して阻害する抗IL-4Rα抗体デュピルマブがアトピー性皮膚炎に有効であると共にバリア機能や痒みの改善にも関与しています。
治療薬「デュピクセント」について
アトピー性皮膚炎の患者さんに対して、画期的な有効性を持った生物学製剤の注射が登場しました。Th2サイトカインであるIL-4、IL-13の抑制が期待される薬剤「デュピクセント」です。
デュピクセントには抗炎症作用、かゆみ抑制、皮膚バリア改善と継続という3つの長所があります。
当院では、2018年8月より2020年現在20例近く治療を行なっており、患者さんは有効性に対して強い満足度を体験しております。特にかゆみ、保湿、皮膚状態の改善などがあげられます。当院でのデュピクセントの治療の印象については「劇的に効果がある」と言えます。